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制がん剤の副作用の一つに「脱毛」があります。脱毛の頻度や程度は、制がん剤の種類によって異なるが、中には全身の毛が完全に抜けてしまう例もあります。

近ごろは医者の側でもそうしたことを配慮して、なるべく毛が抜けない治療法を行なう病院が増えていると、岡山大学農学部助教授の高畑京座先生は語ります。

そうした中、セラチアという微生物が生み出すイムバートという物質に、制がん剤による脱毛を抑える働きがあることを発見したという記事が載っていたのです。これはイムバートによって産生が促されるインターロイキン１という物質が、脱毛抑制に働くようなのです。

この記事を目にした高畑先生の頭には、ＤＨＡが浮かびました。というのもＤＨＡも同じようにマクロファージを刺激してインターロイキン１の産生に影響するという報告があるからです。

高畑先生は、さっそく次のようなラット実験を行ないました。

八日齢の若いラットに、七日間連続で毎日、制がん剤（ＡｒａＣ）を２０ｍｇ／ｋｇずつ注射し、同時にＤＨＡを９０ｍｇずつ胃の中に注入して、毛の抜け具合を観察しました。

そしてそのＤＨＡ投与群ラットと「抗がん剤投与群」「抗がん剤＋ＤＨＡ投与群」「生理的食塩水投与群（＝何の影響もない群）」の毛の抜け具合を、それぞれ比較しました。

七日目に最後の投与を行ない、１０日目の脱毛度合いをみました。

その結果、抗がん剤だけを注射した群のラットでは、スコア３という、かなり脱毛度の激しいラットもいましたが、ＤＨＡを同時に投与した群のラットでは、３匹中２匹がスコア０であり、一番脱毛度の高かったラットでもスコア１という結果になりました。

ＥＰＡ投与群とくらべても、若干、ＤＨＡ投与群のラットのほうが、脱毛度合いが低かったのです。

ただしこの一度目の実験では、最終的な判定時のＤＨＡ投与群のラット数が、他の群にくらべてかなり少なくなってしまっていました。

「実は、ラットがまだ子供でしたので、それぞれの群のラットに哺乳役の里親ラットをつけていたのですが、ＤＨＡ投与群につけた里親ラットにちょっと問題がありまして、途中で数匹のラットが死んでしまったんです。そこでもっときれいなデータを出すために、制がん剤の投与量を倍以上に増やして、もう一度実験してみることにしました。」

二度目の実験では、８週齢の若いラットに、７日間連続で毎日、抗がん剤（ＡｒａＣ）を５０ｍｇ／ｋｇずつ注射し、同時にＤＨＡを９０ｍｇずつ胃の中に注入しています。

対照群として「抗がん剤だけを注射した群」「生理的食塩水だけを注射した群（何の影響もない群）」を作り、それぞれ比較しました。

なお、最初の実験とは違って、投与中の六日目から脱毛度の判定を開始し、その後１０日目まで５日間にわたって脱毛度を判定しました。

抗がん剤だけを投与している群のラットが、ほとんど５０％以上の脱毛度となっているのに対して、ＤＨＡ投与群では９匹すべてが２５％以下の脱毛度に抑えられています。

「６日目と７日目はＤＨＡ投与群と抗がん剤だけを投与した群の差が歴然と出ました。これは明らかにＤＨＡが、脱毛を抑えている証拠です。

実は最終日の１０日目には、ＤＨＡ投与群も６匹中５匹のラットが脱毛度３になったのですが、これは５０ｍｇ／ｋｇいう制がん剤の量が、ちょっと多過ぎたせいでしょう。

というのも、２０ｍｇ／ｋｇの制がん剤を投与していた最初の実験では、１０日目でもだいぶ脱毛が抑えられていたんです。人の場合でもそうですが、制がん剤の濃度が高ければ高いほど、脱毛のスピートは早くなります。

本当は最終日に、両者でもっと明らかな差が出ることを期待していたのですが、そこまではいきませんでした。

いずれにしても抗がん剤だけを投与していたラットにくらべて、ＤＨＡ投与群のラットでは、毛の抜けるスピードがかなり抑えられていたことは事実です。ＤＨＡの投与量をもう少し多くすれば、もっと顕著な脱毛抑制効果がみられるかもしれません。ぜひまた調べてみたいと思っています。」とのことでした。

参考になさってください。

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